食料品減税で価格は本当に下がる?
食料品の消費税を下げる議論では、「税率を7ポイント下げれば、価格も7%下がる」と考えがちです。しかし、税込価格にどの程度反映されるかは、税率差だけでは決まりません。仕入れ価格、人件費、物流費、販売競争、企業の利益方針が関係するためです。
このページでは、減税余地のうち何%が価格に反映されるかを「価格還元率」として入力し、家計の負担と企業側に残る利益を分けて見ます。標準ケースは還元率80%です。
モデルの前提
現行の軽減税率8%を、食料品1%へ下げるケースを考えます。減税による余地の80%が税込価格に反映され、残り20%は企業の利益、賃金、投資、その他の調整に回ると仮定します。
国税庁によると、軽減税率8%は酒類と外食を除く飲食料品などに適用されます。ただし、今回のモデルは制度上の対象品目を一つずつ判定するものではなく、「食料品全体」を分析単位にした簡易ケースです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6303.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6102.htm
還元率80%の結果
食料品の平均税込価格: 約5.2%低下
平均的な家計の年間負担: 約4.2万円減
食料品関連企業の利益: 約0.49兆円増
この3つの数字は、同じ減税余地を別の側面から見たものです。価格還元率を高くすると家計の値下がりは大きくなりますが、企業側に残る利益は小さくなります。還元率を低くすれば企業側に残る余地は増える一方、家計が店頭で感じる値下がりは小さくなります。
価格還元率を50%に下げた場合
還元率を50%にすると、税率差の半分だけが価格へ反映される前提になります。家計の年間負担軽減は80%ケースより小さくなり、企業に残る利益や賃金・投資の原資は相対的に大きくなります。
ただし、利益が増えたからといって、そのすべてが賃金や設備投資に使われるわけではありません。モデルでは、企業利益の一部が賃金や投資へ回る割合も別の入力として置いています。価格還元率は、企業の行動を直接予測する数字ではなく、結果を比較するためのシナリオです。
価格還元率を100%に近づけた場合
還元率を100%に近づけると、家計の負担軽減は大きくなります。一方で、企業側に残る利益の増加は小さくなります。消費者にとっては分かりやすい値下げですが、企業のコスト上昇が同時に起きている場合、実際の店頭価格は別の動きをする可能性があります。
重要なのは、還元率を「正解」として決めないことです。政策実施後に価格を監視するなら、商品カテゴリー、地域、販売チャネルごとに価格の変化を確認し、想定した還元率を更新する必要があります。
家計の負担と企業の利益を同時に見る
減税の効果を家計だけで測ると、価格が下がったかどうかに議論が集中します。企業だけで測ると、利益や投資の変化に注目しすぎるかもしれません。このシミュレーターは、家計、価格、企業利益、追加消費、税収を同じ画面で確認する設計です。
標準ケースでは、税収全体は約2.71兆円減少します。価格が下がって消費が増えれば、所得税や法人税などの戻り税収が発生しますが、直接の消費税収の減少をすぐに上回るとは限りません。
この試算の限界
このページは、実際の小売価格や企業の値付けを予言するものではありません。税率変更の実施時期、競争環境、仕入れ価格、為替、輸送費、賃金、対象品目の範囲が変われば結果も変わります。
また、平均価格の低下率は、すべての商品が同じ割合で下がることを意味しません。加工食品、生鮮食品、外食に近い中食などでは、税の扱いも価格形成も異なります。スライダーで複数ケースを比べ、特定の数字だけで結論を出さないでください。
No comments yet